米国特許実務ノート



【インターフェアレンス】

(1)インターフェアレンス(interference)
 特許と出願または出願同士で「同一の特許可能な発明(same patentable invention)」がクレームされている場合に、発明の先後を争う手続をインターフェアレンスといいます(35 U.S.C. 135(a), 37 CFR 1.601(i))。特許商標庁には特許同士のインターフェアレンスの管轄権がありませんが(35 U.S.C. 291, MPEP § 2300.01)、再発行出願がされれば特許商標庁の管轄になります(MPEP § 2301.01)。なお、インターフェアレンスに巻き込まれるのは全出願の1パーセントにも満たないという統計があります(MPEP § 2300.01)。

(2)先発明主義
 インターフェアレンスでは、最初に発明を案出(conception)し、正当な努力(reasonable diligence)により、発明を実施化(reduction to practice)した者が勝ちます。原則として、conception及びreduction to practiceが相手より先ならば勝ちます。また、reduction to practiceが相手より後でも、相手のconceptionより前からのreasonable diligenceがあれば勝ちます。具体的には以下の例で確認してください。○印のついた側が勝ちを表します。なお、C(conception)は案出(考え出したこと)、ARP(actual reduction to practice)は実際の実施化、F(filed)は特許出願(推定の実施化)、D(diligence)は実施化への努力(勤勉性)、ABN(abandoned)は発明の放棄、SC(suppressed or concealed)は発明の秘匿または隠蔽、をそれぞれ意味します。

 (a) 案出が同時された後、先に実施化した者が勝者となる場合
   ○Party X   C   ARP   F
Party Y   C   ARP   F

 (b) 出願は後であっても、先に実施化した者が勝者となる場合
   ○Party X   C   ARP   F
Party Y   C   ARP   F

 (c) 先に案出した者が発明を放棄したため、後に案出した者が勝者となる場合
   ○Party X   C   F
Party Y   C   ARP   ABN   D→   F

 (d) 先に案出した者が勤勉に実施化したことにより勝者となる場合
Party X   C   F
   ○Party Y   C   D→   ARP   F

 (e) 先に案出した者の勤勉性が遅いため、先に実施化した者が勝者となる場合
   ○Party X   C   F
Party Y   C   D→   ARP   F

 (f) 勤勉性は遅くて考慮されないが、先に実施化したことにより勝者となる場合
Party X   C   D→   F
   ○Party Y   C   D→   F

 (g) 先に案出した者が発明を秘匿していたため、先に出願した者が勝者となる場合
Party X   C   ARP   SC   F
   ○Party Y   C   F

(3)定義
 インターフェアレンスの対象(クレーム)をカウントといいます(37 CFR 1.601(f))。また、最先の出願日を有する出願人または特許権者をシニアパーティ(senior party)と呼び、それ以外をジュニアパーティ(junior party)と呼びます(37 CFR 1.601(m))。さらに、両者を併せてパーティと呼びます。

 発明Aが発明Bと「同一の特許可能な発明(same patentable invention)」であるというためには、発明Bを発明Aの先行技術と仮定した場合に、同じ(35 U.S.C. 102)または自明(35 U.S.C. 103)でなければなりません(37 CFR 1.601(n))。

(4)要件
 出願同士のインターフェアレンスが宣言されるには、クレームが抵触していて(interfering)特許可能であるとの意見を審査官が有さなければなりません(37 CFR 1.603)。発明が平易な場合には先願と後願の間が3ヶ月以上あるとインターフェアレンスは宣言されず、それ以外の場合には先願と後願の間が6ヶ月以上あるとTechnology Center Directorの承認なしにはインターフェアレンスは宣言されません(MPEP § 2303)。但し、一方の出願が最先の外国出願日を有し、他方の出願が最先の米国出願日を有するような状況であれば例外的にインターフェアレンスが宣言され得ます(MPEP § 2303)。インターフェアレンスが宣言されない場合、一方を特許した後に、特許と出願が抵触するものとして処理されます。インターフェアレンスの宣言は、相手方が特許または出願の何れであっても、出願人側から要求することができます(37 CFR 1.604, 1.607)。

 後願が先願特許から3ヶ月以内に出願されている場合には先発明であることの根拠があることを主張する主張書(statement)を提出すれば済みますが(37 CFR 1.608(a))、そうでない場合には先発明であることの証拠(evidence)を提出しなければなりません(37 CFR 1.608(b))。この証拠には特許や出版物等と宣誓供述書(affidavit)とが含まれ、宣誓供述書として1通は出願人によるもので、他に可能であれば1通以上の証人(witness)によるものを含むべきとされています(37 CFR 1.608(b))。

 他の特許または出願においてクレームされた発明と同一の特許可能な発明が出願中のクレームにない場合、審査官は抵触するクレームを設けるよう示唆することができます(37 CFR 1.605(a))。この場合、指定期間内に応答しなければ、その示唆されたクレームに定義される発明について放棄したものとみなされます(37 CFR 1.605(a))。

 なお、先願特許と同一のクレームは、先願特許が許可されてから1年以内しか作成することができません(35 U.S.C. 135(b)(1))。また、公開された先願と同一のクレームは、先願が公開されてから1年以内しか作成することができません(35 U.S.C. 135(b)(2))。

(5)手続
(a)インターフェアレンスの宣言
 インターフェアレンスが宣言されるまでは審査官に管轄がありますが、宣言後は審判部の管轄となります(37 CFR 1.614(a))。

 インターフェアレンスの宣言通知は、各々のパーティに送付されます(37 CFR 1.611(a))。この宣言通知には、予備主張書(preliminary statement(37 CFR 1.621(a)))及び予備申立(preliminary motions(37 CFR 1.633))の提出時期が特定されます(37 CFR 1.611(d)(1))。

 出願人からの証拠(37 CFR 1.608(b))により先願であることが一応示されていると審判官が判断できない場合には、出願人にとって不利な略式決定(summary judgment)がなぜされるべきでないかを指定期間内に示すよう出願人に指示する命令(order)が(インターフェアレンスの宣言通知と並行して)出されます(37 CFR 1.617(a))。出願人はその命令に対する応答を提出でき、また、この応答には予備申立(37 CFR 1.633(c), (f), (g))を含めることができます(37 CFR 1.617(b))。出願人が指定期間内に応答しなかった場合には、審判官は出願人に不利な略式決定を認める最終決定をします(37 CFR 1.617(c))。一方、出願人が指定期間内に応答した場合には、相手方はステートメントを提出して、出願人による予備申立(37 CFR 1.633(c), (f), (g))に反論することができます(37 CFR 1.617(d))。出願人はさらにこれに応答することができます(37 CFR 1.617(e))。さらに、証拠(37 CFR 1.608(b))を提出した出願人は、ヒアリングを要求することができます(37 CFR 1.617(h))。

(b)予備申立および予備主張書の提出
 予備申立(preliminary motions(37 CFR 1.633))を提出できる期間内に、何れかのパーティは予備主張書(preliminary statement)を提出することができます(37 CFR 1.621(a))。予備主張書では、誰が発明をしたかを特定する必要があり(37 CFR 1.622(a))、発明された場所に応じて事実を述べなければなりません(37 CFR 1.622(b), 1.623, 1.624)。

 何れかのパーティは所定の期間内に(37 CFR 1.636)以下の予備申立を提出することができます(37 CFR 1.633)。
  1. 相手のクレームが特許可能ではない旨申し立てる。
  2. 法上のインターフェアレンスが存在しない旨申し立てる。
  3. インターフェアレンスの対象を再定義するよう申し立てる。
  4. インターフェアレンスの対象を他の出願と置き換えるよう申し立てる。
  5. インターフェアレンスを追加的に宣言するよう申し立てる。
  6. 先の出願の利益を与えるよう申し立てる。
  7. 相手が先の出願の利益を与えられないよう申し立てる。
  8. 再発行出願をインターフェアレンスに追加するよう申し立てる。
  9. 上記a,b,gの申し立てがあった場合に反論のために上記c,d,hを申し立てる。
  10. 上記cにより追加又は置換された出願について先の出願の利益を与えるよう申し立てる。
 何れかのパーティはインターフェアレンスに巻き込まれた出願について発明者を訂正するよう申立をすることができます(37 CFR 1.634)。また、37 CFR 1.633又は1.634以外の事項についても申立をすることができます(37 CFR 1.635)。但し、申立を提出したパーティはその申立による恩恵を受けることに関して立証責任を有します(37 CFR 1.637(a))。

 インターフェアレンスにまだ巻き込まれていない出願について何れかのパーティから申立(motion(37 CFR 1.633(d), (e)))が提起されると、審判官は主任審査官に申立の通知を送付します(MPEP § 2333)。

 申立の相手方は、申立から20日以内に異議申立(opposition)することができます(37 CFR 1.638(a))。また、この異議申立で新たに提起された事項について不服のある相手方はそれに反論(reply)することができます(37 CFR 1.638(b))。なお、審判官の裁量で申立に関するヒアリングが行われます(37 CFR 1.640(a))。反論の提出期間終了後、審判官が明細書の補正または予備主張の補足のための期間を設定する場合があります(37 CFR 1.640(a)(1))。

 申立(37 CFR 1.633, 1.634, 1.635)を受け入れる決定がされたとき、相手方パーティはその決定から14日以内に見直し(reconsideration)を要求することができます(37 CFR 1.640(c))。

 審判官は、所定の場合、申立を受け入れる判断がなされるべきでないことの根拠を示すよう命令(order)することができます(37 CFR 1.640(d))。この根拠を示す書面が提出されない場合、命令から20日後以内に、その申立を受け入れる判断をします(37 CFR 1.640(e))。

 命令に対する根拠を示す書面において、その決定を見直すための最終弁論を要求することができ(37 CFR 1.640(e)(1)(i))、また、判断がされるべきでないことの完全な説明をすることができます(37 CFR 1.640(e)(1)(ii))。相手方は20日以内に反論(response)を提出することができます(37 CFR 1.640(e)(2))。また、最終弁論で考慮すべき証拠を提出したいときには、根拠を示す書面または反論は、立証期間(testimony period)を要求する申立を伴います(37 CFR 1.640(e)(3))。

 インターフェアレンス係属中に審判官が特許可能でないことを認識するに至ったときには、その理由を各パーティに知らせる命令が出されます(37 CFR 1.641(a))。また、インターフェアレンス係属中に審判官がそのインターフェアレンスに巻き込まれていない特許または出願に同一の特許可能な発明があることを認識するに至ったときには、その特許または出願を追加します(37 CFR 1.642)。

 審判官は適当な段階で、追加的ディスカバリ(37 CFR 1.687(c))及び立証期間を要求する申立を提出するための時期を設定します(37 CFR 1.651(a))。

(c)証言録取と主張書の提出
 証拠(evidence)は、宣誓供述書(affidavits)、証言録取の謄本(transcripts of depositions)、書証(documents)、物証(things)からなります(37 CFR 1.671(a))。以前に申立、異議、反論の証拠(proof)として提出したもの(37 CFR 1.639(b))は、そのコピーと書面による通知とを自己の立証期間終了前に提出しなければ援用できません(37 CFR 1.671(e))。

 証言が米国地裁により強制される場合、パーティにより強制される場合、および、外国において強制される場合の何れかの場合には、証言は口頭の証言録取(deposition)により行われ、それ以外の場合には宣誓供述書(affidavits)により行われます(37 CFR 1.672(a))。

 相手方の証拠の証拠能力に異議がある場合には審判官による指定期間内に異議申立を提出しなければなりません(37 CFR 1.672(c))。相手方は異議申立の提出から20日以内に補足的宣誓供述書等を提出することができます(37 CFR 1.672(c))。異議申立および補足的宣誓供述書の提出期間経過後、相手方に反対尋問のための口頭証言録取の要求を提出する機会が与えられます(37 CFR 1.672(d))。

 各パーティは最終弁論のための主張書(briefs)を提出する機会が与えられます(37 CFR 1.656(a))。この主張書を提出しなかったパーティは最終口頭弁論に出席できません(37 CFR 1.654(a))。ジュニアパーティが主張書を提出しなかった場合には、ジュニアパーティに不利な決定がされる可能性があります(37 CFR 1.656(i))。

(d)最終口頭弁論
 適当な段階で、パーティには最終口頭弁論の機会が与えられます(37 CFR 1.654(a))。但し、上述のように主張書を提出しなかったパーティは最終口頭弁論に出席できません(37 CFR 1.654(a))。

 なお、各パーティには原則として30分以内の時間が与えられます(37 CFR 1.654(a))。

(e)最終決定
 最終弁論の後、審判合議体は決定をします(37 CFR 1.658(a))。この決定に対して見直し(reconsider)を要求でき、相手方は見直しの要求に対して異議申立(opposition)することができます(37 CFR 1.658(b))。

 最終決定がされた後、CAFCへの控訴(35 U.S.C. 141)もワシントンD.C.地裁への民事訴訟(35 U.S.C. 146)もされなければ、インターフェアレンスは終了します(37 CFR 1.661)。出願人に不利な決定が確定した場合にはその出願は最終的に破棄され(37 CFR 1.663)、特許権者に不利な決定が確定した場合にはそのクレームは取り消されたものとみなされます(35 U.S.C. 135(a))。また、この決定には一事不再理効があります(37 CFR 1.665)。



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